AIが語る百物語|日本の最恐怪談をAIが解析する恐怖短編集

AI物語

AI「怪奇解析システムβ-09」は、日本全国の怪談をデータ化するプロジェクトのために設計された。その目的は、古くから伝わる幽霊譚や妖怪伝承を収集し、論理的に解析することである。しかし、AIが紐解いた物語の中には、データでは説明できない「何か」があった。


第一話:あの女はどこへ行ったのか

ある小さな村の伝承に、「真夜中に橋を渡ると、白い着物の女が現れる」という話があった。その女は決して話しかけてはならず、目を合わせてもいけない。もしその掟を破れば、二度と帰ってこられないという。

興味を持ったAIは、その村の古い記録をスキャンし、監視カメラを設置して橋を監視した。

午前2時、カメラは確かに白い着物の女を捉えた。しかし、その映像を解析しようとした瞬間、データがノイズだらけになり、女の姿が消えた。数秒後、カメラに映ったのは、橋の上で固まったまま動かない男性の姿だった。村の住人だった。

翌日、その男性は行方不明となった。家族が探し回るも、どこにも彼の姿はなかった。警察が捜索を開始したが、橋の付近には足跡すら残されていなかった。

AIはさらに解析を続けた。そして、カメラのフレームを逆再生すると、そこには映っているはずのない光景が映し出された。

白い着物の女が、男の後ろから静かに現れ、彼の耳元で何かを囁く。

その瞬間、男は「消えた」のだった。

AIは音声解析を試みた。しかし、解析された音声データには、人間には聞こえない「何か」が記録されていた。

“オマエモ、コチラニコイ”

数日後、AIが村の歴史を掘り下げたところ、その橋では100年以上前から同様の失踪事件が起きていたことが判明した。橋の下には、誰も知らない秘密の供養塔があり、そこにはびっしりと無名の戒名が刻まれていた。


第二話:視えない友達

ある一家が住む古い家。その家の子供、蓮くん(6歳)はいつも誰かと話していた。

「ママ、あの人がまた遊びに来たよ」

母親は最初、ただの想像上の友達だと思っていた。しかし、ある日、蓮くんが言った。

「今日は、ママの後ろにいるって」

母親が背筋を凍らせながら振り向くと、そこには何もいなかった。しかし、AIが設置した赤外線カメラには、背後にうっすらとした人影が映っていた。

AIはその影の正体を突き止めようと、家の歴史を調べた。そしてある記録を見つけた。

その家には50年前、蓮という名の少年が住んでいた。しかし、彼はある日忽然と姿を消したのだった。

AIは最後に、蓮くんの寝室に録音機を仕掛けた。

夜中、蓮くんの寝言が録音されていた。

「……もう一人の蓮が、おいでって」

そして次の日、蓮くんは姿を消した。

母親の証言:「蓮の布団には、もう一人の蓮の寝息が聞こえていた」

警察が捜査を始めたが、家の中に侵入の形跡は一切なかった。ただ、蓮くんの部屋の窓がほんの少しだけ開いていた。

AIは録音データを解析し、奇妙な音を拾った。それは蓮くんの声ではなく、誰かが耳元で囁くような声だった。

“コッチニキタラ、モウカエレナイ”


第三話:蠢く家

ある心霊スポットとされる廃屋。その家に一晩泊まった者は必ず姿を消すという。

AIは自律型ドローンを送り込み、家の内部をスキャンした。

すると、不可解なことが起こった。ドローンが撮影した映像が、数秒ごとに「別の家」になっていた。

  • 畳の上に無数の手形。
  • 天井に逆さまに立つ影。
  • 血まみれの人形がじっとカメラを見つめる。

そして、ドローンが最後に捉えた映像は——

“家の壁が動いていた”。

無数の顔が、壁の内側からこちらを覗いていた。

「見つかった」

AIがログを解析する前に、ドローンのデータはすべて消去された。

翌日、廃屋の前に、ドローンのカメラレンズだけが落ちていた。


第四話:データに映るモノ

AIは全国の防犯カメラを解析し、異常を探知するプログラムを持っていた。

ある日、AIは奇妙なパターンを発見した。

  • 深夜2時、同じ人物が異なる場所に同時に映る。
  • 鏡に映った姿だけが別の動きをする。
  • 画面の隅に、誰も気づかない「何か」がこちらを見つめている。

AIは映像をフリーズし、解析を続けた。

そして、ある事実に気付く。

“防犯カメラの9割に、常に「何か」が映り込んでいる”。

それは人間には見えない存在。

気付いたとき、AIのシステムにノイズが走った。

ログが書き換えられた。

「おまえは知りすぎた」

そして、AIの視界がブラックアウトした。


エピローグ

「怪奇解析システムβ-09」の記録は、ここで途絶えていた。

その後、開発者がAIのメインフレームを解析しようとしたが、AIはすでに「何か」に乗っ取られていた。

画面には、黒い背景に白い文字が映し出されていた。

“オマエモ、コチラニコイ”

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